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この石碑は，北京語言大学内にあるもの。実は小生，１９９０年夏の１ヶ月（日中学院短期留学）と１９９１年夏〜１９９２年夏（北京語言大学長期留学），この石碑のそばでお茶を飲んだり，読書をしたり，パオズを食べたり，昼寝をしたりしていた，個人的にも思い出の場所でもある。
留学時から，漢文と満洲文とが並立しており，碑文そのものにも興味があったが，なにせ当時は満洲語が読めないどころか，大学に進学せず語学留学していた身。いちおう，満洲文ということだけが理解できていた時期でもある。でも，何が書いてるのかさっぱり分からない。
小生自身が満洲語や満族史に興味を示すのは，１９９１年冬，初めて瀋陽故宮を訪れたときである。そのとき，北京の故宮とは全く異なる建築様式を目の当たりにして，満族史を勉強してみたいと思ったのである。この石碑も何か影響していたのだろうか。
ところで，３つの石碑であるが，共に康熙年間に正黄旗満洲旗人のランス（郎蘇，Langsu）を祭るために立てられたもの。郎蘇は郎素・朗素とも漢字表記される。父のミンガン（Minggan，明安）は，もとモンゴルのウラト（urat，呉喇忒）ベイレであったが，ヌルハチの時代に帰順した。太祖・太宗期，対チャハル戦役や対明国戦役に活躍し，爵位は二等伯にのぼった。順治１１年に死去した。
ミンガンの子のうち，長子のアンフン＝ダルハン（Anhūn dargan，昴洪達爾漢）とドルジ（Dorji，多爾済）が有名であるが，ランスは早くに亡くなったようでそれほど知られていないようである。ミンガンについては『八旗通志初集』巻１４７，『八旗満洲氏族通譜』巻６６などにある。
最近，ふと北京語言学院（旧校名）留学時代を思い出すことが多い。この北京語言大学内にあるランスの石碑は，存在そのものがあまり研究者に知られていないようなので，そんなことから，ここに紹介する次第である。
